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2022年度 |
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■東左連関事業
市場開拓委員会活動報告
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■開催日:
令和4年1月29日(日)
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■開催場所:
都立城東職業能力開発センター
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左官伝統工法を見る講習会(土壁編) |
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■市場開拓委員会 活動報告 |
左官伝統工法を見る講習会 |
(土壁編) |
東京都左官組合連合会
阿 嶋 一 浩 |
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1/29(日)、東京都立城東職業能力開発センターにて、東京都左官組合連合会(会長・阿嶋一弘)が主催した「左官伝統工法を見る講習会(土壁編)」を開催されました。設計事務所、ゼネコンの方を含めて総勢約170名の参加がありました。
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前半は座学で、昨年(2022年)壁土が不燃化された内容を、日左連の鈴木光先生が講義されました。
建築基準法施行令により、火気使用する室、自動車車庫、病院、ホテル等の特殊建築物などは、「内装制限」*註を受けて壁及び天井に防火性能を有する材料による仕上げとしなければならない。一方で、壁土については、「不燃材料を定める件」等に位置付けられていなかったため、
•土壁の既存建築物を店舗やホテル等に用途変更する場合には、壁を土のままとできない
•木造等の壁のボードの上に土を塗って仕上げができない
等の課題があった。
*註:内装制限
令和4年5月に、「不燃材料を定める件の一部を改正する件」(令和4年国土交通 省告示第599号)の告示により、「厚さが10mm以上の壁土」が不燃材料に追加された。
壁土を不燃材料として建築物に使用する場合に施工方法その他の留意事項について、(一社)日本左官組合連合会において検討した内容を、『壁土仕上げ標準施工要領』として纏めた。その内容が説明された。キーポイントは次の項目です。
・せっこうボードを下地とする中塗り(切返し)仕上げ、並びに、こまい壁の下塗りを下地とする中塗り仕上げ及びこまい壁の中塗りを 下地とする土物仕上げに適用される。
・すさとのりを合わせた混入率は、原土と骨材を合わせた乾燥質量に対して3.2%以下不燃材料としての総発熱量の制限値8MJ/㎡より、2割程度の余裕をもっている。(試験体での上限3.2% (試験体A)は、練り混ぜ可能な最大含有量)
・乾燥後の厚さを10mmにおいては、不燃材料として要求される発熱性(8MJ/㎡以下) を満たす。
・のりとして使用できるのは海藻類を粉末にしたもの(粉つのまた)で、現場において 水を加えるだけでのり液となる。
次に、左官職人久住有生さんが土壁の施工事例をスライドでどんなところで土壁が塗られているのか自身の施工例を見ながら説明されました。
現場では企画段階から参加することが多く、デザイン提案なども行っており、伝統的な左官技術とオリジナリティ溢れるアイデアを生かしている。また、その土地の暮らしや自然を意識しながら、土や材料を選び、それぞれの風土も大切にして施工しています。(左官株式会社HPより)
・大規模な土壁:【土泥んこ館 版築】愛知県常滑市・INAXライブミュージアム内の土の博物館です。建物外壁は巨大で豪快な版築土壁です。内部は様々な土・漆喰の繊細で大胆な左官の仕上げとなっています。土の多様性を知り、機能的・意匠的に重要視される土に触れ、学習できる多目的空間となっています。(虎瀬敬工房HPより)
・伝統土壁の伝承:【輪違屋 もみじの間】300年以上の歴史をもつ置屋兼お茶屋の修復・復元工事で既存のもみじの位置をミリ単位で実測し、本物のもみじを型にして模様をつけ、型にしたもみじも既存の壁のもみじと同じ大きさや、形の合うもみじを一つずつ選び出し使用しています。(左官株式会社HPより)
・大規模な土壁【Capita Green 版築風仕上げ】2014年9月(シンガポール)
・子供たちに受け入れられた汚しても擦れても安全な素材の土壁:【港区立芝浦小学校 大壁】2010年(東京都 港区)
・特殊な工法としてヒビを制御した土壁面:【Van Cleef & Arpelsヴァン クリーフ&アーペル 大阪心斎橋店】2018年2月
(大阪府 大阪市)
説明の後に、施工事例から左官は技・能だけでなく、美しいことがポイントです。土は無限、土は難しいが、後世に繋げで行きましょうとのエールがありました。
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後半は、座学に引き続いて、土壁の施工方法(配合、下地、仕上げなど)を久住有生さんが実際に塗りながら分かりやすく解説されました。2022年「厚10mm以上の土壁」が不燃材料として告示化されましたが、それをどのように必要な厚みを塗り重ねていくか?配合をどのように考えていくか?というものでした。
原土は、今回は田中石灰の中塗り土を利用しているが、他の土の場合、手でボール状に固めたものを膝の高さから落として形が壊れなければ利用できます。 骨材との混合比率は鏝塩梅で確認する。仕上げ後のアクは原土を2厘篩程度で篩うと細かく出てと綺麗だか荒いとツブツブに出る。
砂は、大きい丸い城陽砂と小さい角ばっている小原砂を配合して粒度分布が均一となるよう配合して1分5厘篩とする。関東では左官砂が利用されているが色が黒いのが難点です。
すさは晒しすさを使っているが、製造年代で柔らかさや大きさが異なる。ザルで篩って重さで分けているが、現実では混合攪拌したものをすさ塩梅、塗り塩梅で各自が確認して使用する。
まず、せっこうボードを下地の下地材としてボード/土の付着性の良いα石膏が主原料のCトップにグラスウール1袋(20g位)を混入して攪拌後に骨材が転ぶ程度に塗り付け、2mm程度の上付けを行います。
下塗材が未硬化のうちに、原土と軽量骨剤骨材(硅砂5/6号(半々)でもよい)を1:1.5に合わせた材料のバケツ1杯にすさ1摑みを混入して攪拌して3mm厚さで塗る。塗りの後に次の材料の付着性を高めるために刷毛引きをする。2-3時間後に水引きを確認して3mm塗り付ける。更に2-3時間後に水引きを確認して3mm塗り付ける。合計9mm厚さとして翌日まで乾燥させる。
1回で下地を作る場合、上記と同様のCトップグラスウール1袋(20g位)を混入して攪拌後に骨材が転ぶ程度に塗り付け、2mm程度の上付けを行います。表面に原土の引き塗りをした後に水引きの調整するハイフレ5倍液の刷毛ぬりをする。下塗材が未硬化のうちに、原土と硅砂5/6号(半々)の1:1.5をバケツ1杯にスザ2摑みを混入して攪拌して3mm厚さで塗る。水引きを見て6mm塗り仕上げ塗りをする。合計9mm厚さとして翌日まで乾燥させる。
なを、すさを分散させるようにして、こてむらや塗継ぎが出ないように入念になで切りを行って仕上げる。
中塗りの翌日に仕上げ塗りをする。
中塗り鏝は東京西勘の油焼き。7-8寸地金を普段は利用している。仕上げには本焼きを利用している。半焼きの鏝を使用することも可能です。
中塗りの塗り付けの前に予めチリ箒で周辺の掃除(水湿し)をしている。また中塗りが終わった時点でチリ箒を用いて掃除をする。この際チリ箒を土の中数mm中に入れチリじゃくりもどきを作っておく。塗り付けの手順は下記URLを見てください。
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仕上げには、その平滑さを確認するため燈火を用意して特に西日に当たる状況で平滑を確認する。また最終仕上げは右から左(関西の手順で、関東では逆に左から右)に通してすさの向きを一定にして仕上げる。仕上げの手順は下記URLを見てください。
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今回、参加者の中から2名が実際に塗り付けを行い、久住有生さんのアドバイスを受けました。特に見習い左官に対しては数年の練習での熟度はすばらしいとの称賛があり、また下記のアドバイスがありました。
・鏝は柔らかく握り、親指は鏝柄の中央に置き、操作がし易くする
・チリ際の修正は難しいので、チリ周りは鏝を壁面に平行に動かして、チリ際を凹まさないようにする
・ゆっくり鏝を動かす
また、材料メーカーが品質の安定したプレミックスの土壁を販売していくとのことで、田川産業の試供品(大分の土)及び深谷配合粘土工業(「深谷じゅらく土」)の試し塗りを行い、施工の上で特に問題なく利用できるとの判断がありました。
最後の質疑応答の中で、単価について質問があり、今回の講習で施工したボードへの中塗り(切り反し)仕上げ3㎡には1.5人工が必要であり、せめて10-15¥/㎡を想定したいと回答されました。
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